ガイド日誌 -Recent Highlights -過去のガイド日誌はこちら-
ガイド開始初日は札幌市内の各ショップ巡り。
3泊4日の渓流遡行に必要なギアを整えてもらう。
今回お邪魔したのは地元のヤマ屋御用達の老舗プロショップ
「秀岳荘 札幌本店」
ここでテントやシュラフ、防水バックパックや食料など山中生活に必要な物資がひととおり全部揃う。
9月末
米国から新たにメンバー合流。
札幌大通公園では毎年9月に「オータム・フェスト」 が開かれる。今や9月の札幌定番イベント。
今回、彼らのメインは山中3泊4日のテント泊釣行。準備と予備の日程を含めてこれから8日間のガイドとなる。
特に山域深くへのテント泊釣行は能力や気心の知れたリピーターだけに限って万全の日程と準備の上で案内している。 大変申し訳ないがテント泊のエクストリーム釣行のガイドは初対面の方ではお引き受けしていないので注意してほしい。 商業ガイドとしてはリスク管理上それはやってはいけないことなのだ。
ついでに、、、
立ち寄った札幌市内のフライショップ「THAMES」
釣り道具の山にしれっと混ざって…太公望師淑のフィギュア発見!!
パッキングにはたっぷり時間をかけて…
あれもこれもなんでも持っていこうとすると
重量ハンパなくなってしまう。
パッキングのコツは如何に日常の便利さを犠牲にして持ち物を省略シンプル化・軽量化してゆくかなのだが…
1人の3泊4日分のバックパックの重さはだいたい12〜15kg前後といったところ。(釣り具やカメラ・キャンプ用品・食料など全部含む)
翌日からの釣行に備えて、この時点で全員の保険の加入状況も確認する。
KAMUYでは全ての参加者に対してリスクに対応する山岳保険への各自での加入が必須。
2日目
夜明け前起床。
この日は準備と各自の練習・スキルチェックのため近隣の川へ日帰りのデイトリップ。 9月末の早朝の気温は一桁。 さらに寒いであろう谷の底でのキャンプのためには真冬用のシュラフが必要だということをメンバー全員が身をもって体感してゆく。
最終的に本番ではガイドによって各自の装備類をひととおりチェックしてから現地へと向かうが、そういった作業のためにも釣行日程だけではなく準備のための日も必要であることを伝えておきたい。 山中3泊4日ほどの日程を予定しているのであれば、天候待機予備日と準備日を含めて最低でも1週間の日程を要する。
練習日は実際に川に降り、重いバックパックを背負った状態で、各自の能力をガイドがチェックしてゆく…
この時点で装備やパッキング・個々の技術などに改善すべき点などがあればアドバイス。
本格的な山行では安全のため、こういった慎重な準備日の確保が必要不可欠だ。
この日ガイドからゲストへの改善要求点はスリッピーな足回りだった。 SIMMSの最新ラバーソールを今回ウェーディング用に持ち込んだ彼だったが、日本のフリーストーンでは現在のラバーソール製品技術ではまだまだ役不足。
実際彼はこの日何度もスリップダウンしていたため、安全のため改善を要求した。 ほんとうはピン無しのフェルトソールを使用するのが理想的なのだが今回はスパイクを打ち込んで対応してもらうことにする。
この他1人がシュラフの保温力不足に不安があることが判明していたためこのあと再び札幌へ。
そして翌日以降3日間の間、天候・気圧配置など安定しそうであることをガイドが最終的に確認し、全員に明日の朝、本番の決行を告げる。 ただ、3日目以降の天候がおそらくまとまった降水のアリそうな予測… 場合によっては2泊3日で引き上げる可能性についても ゲストに相談し全員の快諾を得る。
ガイド3日目
いよいよ本番の遡行開始。
今日から少なくとも3日間は文明から隔離される。 当然だがWi-Fiはおろか、3Gすら届いてない完全な通信圏外。
便利な文明に慣れすぎた現代人にとっては不便と思うかもしれないが、たまにそういう環境に身を置いてみるのは悪いもんじゃない。
なので誰にでもこういうことはオススメできる。
この日のテント設営予定場所まで遡行する。釣りをしながらの遡行で丸1日を要する行程。
釣りをしなければ足の慣れた人ならば2時間程度といったところだろうが釣りをしながらの徒歩移動は釣りをしない場合に比べて10倍くらい時間がかかることを予測して行動しなくてはならない。
浅く流れの速い瀬を超え、深い釜をへつり… 徐々に深山に分け入ってゆく…
2時間ほど釣り上がったあたりからアメマスの楽園となる。 9月末のこの辺りでは今ちょうどスポーニング真っ最中。 釜の開きには必ずといって良いほど70cm近い良型の雌雄がカップリングしている。
ゲストは皆夢中になってそういうのを釣ろうとするが…
スポーニング中の「見える魚」っていうのは釣れないんだよ、と何度説明してももはや聞く耳無し状態だったw
実際釣れてくるのはこれくらいの40〜50cm中型サイズばかり。
途中で支流の分流に立ち入り、険悪な函地帯の突破とスポットの釣りを試みる。
場所によっては高巻いたりするよりも思い切って泳いだ方が早いが、そういった判断は谷の遡行に慣れた人にしかできない。
ガイドがまずザイルを曳いて先頭で上がり、後続のゲストはザイルで引っ張り上げられるという作業を人数ぶん繰り返す…
9月の谷の水は水温9度… 頭にキンキンくるぐらい冷たい。
泳ぐ自分の足の下をゆうに80cmはあろうかという巨大ニジマスがサーーーっと走っていなくなる姿が目に飛び込んでくる… 鮮烈なレッドバンド持ち。
泳ぎだす前のポイントチェックで全く反応しなかったくせに…
夢に出てきそうな魚がまた一つ記憶に刻まれてしまうのだった。
今回の釣行で大幅に荷物の軽量化に役立ったアイテムがこれ。
「Grayl ウォーターピュリファイヤー」
所謂、携帯浄水器。
渓流遡行の場合これでいつでも素早く飲料水を作り出すことができるからあの重たい水を背負う苦痛から解放されるというスグレもの…!
製品自体の評価はかなり高く、北海道でも多くの山岳ガイドが実際に使用している。 北海道の場合は自然の沢水を飲用に処理する場合エキノコックス原虫の心配があるから、いくら綺麗でも濾過・煮沸処理なしでは従来は使用をためらっていたが… こういった優れたグッズの登場でそれも全て解決された。
水を濾過する目的以外にも、夕食のおかず用に採集した沢ワサビなどを入れて運搬するなどにも適している。