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2020年 10月
「ゴ〜〜〜」
容赦無く叩きつける雨。
完璧に防水対策をしたはずの装備も、時間の経過とともに何処からか冷たい水が染み込んでくる。気温は一桁台。
昼過ぎから夕方まで、ひたすらイトウのアタリを待つも反応はゼロ。 2020年はよく、こうした状況が記憶に残るものとなる。
結果的には不運なタイミングにぴったりはまり込んでしまった1グループを除いて、今回の他の参加グループは全てイトウに出会うことができた。その辺りの安定感の高さは健在で、この手付かずの聖域の魚影の濃さには本当に感謝したいと思う。
全国的に短期間集中豪雨の多い年となった2020年。 現代の科学で解明され、原因の一つとして最も有力視されているのが遠く地球の裏側で起こる「ラニーニャ」と呼ばれる自然現象。 南米沖の海水温度の変化が遠く離れたこの日本列島にまで影響を及ぼす。 一般にラニーニャが観測された時は日本列島では短期間の降水量が多くなり、冬は寒さを増して列島各地で洪水や大雪となる場合が多い。 気象庁による最初のラニーニャ観測の予報が発表されたのは2020年8月。 「今秋から来年の春にかけて南米沖でラニーニャ現象が発生する確率が高い」 というものだったが‥ 気象庁の予想通りラニーニャは発生して10月中旬以降、北海道道北地域は連続した「帯状降水帯」に連日覆われることとなった。
平年比で河川の水位は倍近くにまで上昇し、水位が倍になった場合は流量にしてみれば実に10倍かそれ以上のものとなっている。それくらいの量の降水があったのである。 ‥川はまるで別のもののように変貌してゆく。
秋のイトウの釣り場となっている道北の湿原河川は一見ほとんど流れがないようにも見え、水は茶色く淀んでいる。 雨による増水の影響など果たしてあるのだろうか‥ と釣り人なら誰しもが考えるだろう。 長年イトウをガイドしてきた立場から結論を言わせてもらうならば‥ 「おもいっきり影響がある。‥それも悪い方。」 ‥ということになる。
そんなに水位が増えてないように見えてもどのポイントでも全く反応がなくなってしまうのだ。連日ルアーなりフライを一日中通しているからわかる。
おりしもタイミングは秋のイトウをこの手にしようと日本全国から多くのアングラーが集うピークの週。 10月下旬〜11月初旬の連休がらみの週だ。 ‥このタイミングに残酷にも湿原河川は「最悪」の生命感ナシの状況に陥ってしまったのだ。 コロナ渦によって間違いなく普段よりも多くの釣り人がこの地を訪れていたようだったが‥
地元の釣具店などでも連日のように地元の釣り人からもたらされる情報が入ってくるが、おそらく自前(ガイドなし)の釣り人でこのタイミングに運よくイトウを手にできた人はほとんどいなかったようだ。
道北地域で最も多くの釣り人を集める猿払川。 時期になると川の両岸にズラリと釣り人が立ち並び、各々竿を振る光景が見られる。 ルアー、フライの対比はちょうど半々くらいだろうか。
連日にわたって入れ替わり立ち代り、多くの釣り人による度重なるキャスティングによって魚は当然だがスレきっている。それでも稀に良いサイズのイトウがキャッチされたりすると瞬く間にネットやSNSなどを中心に噂が広がり、翌日以降はさらに多くの釣り人が同じポイントに殺到して魚は一段とスレてゆく。 といった感じ。 そこに加えて追い討ちをかけるように、この秋の集中豪雨による頻繁な増水の状況下では、もうマグレですら完全に釣れなくなってしまったらしく、自前(ガイドなし)はほとんどがノーヒットでこの地を後にする切ない結果となっていたようだ。
ではKAMUYさんはどうかというと‥
万全の装備で臨んだにも関わらず、選んだ4日間がすべて最悪のタイミングに当たってしまった不運なゲストが今回1組だけいた。
活性の下りきった魚になんとかその気になってもらおうと一体どれだけのキャストをしただろうか‥ 普段は関東でライギョの釣りをしているという彼らは、愛用のベイトタックルで岸際のボサ下の中でもガイドの指示したポイントに次々と小気味よくルアーを入れて探っていく。 雨からすでに天気は雪に変わり、冷たい風は容赦無くゴアのカッパ越しに体温を奪いとってゆく‥
‥どうしたらこの最悪の状況でも釣れるだろうか?? ボートの上では様々な試行錯誤を重ねる。 あーではないか、いやこーだ‥と、毎晩たくさんゲストと話したりもした。 結果は無情で自然の猛威の前に惨敗することとなってしまったが‥
この2020年のイトウもほとんどのゲストが4日間の日程を組んで参加していた。
そもそもこの4日という数字、どうしてそうなるのかというと一応理由がある‥ この時期の天候の周期が3〜4日で悪天候と好天を繰り返すために、4日取っておけば最悪1日は必ず良い日に当たるだろうという「なんとなく」な根拠によるものなのだ。 そのへん実にアナログであるが、それでだいたいみんなイトウを釣ることができるのである。
ゲストは滞在中に必ず「決定的なチャンス」に何度か出会うことになるが、その瞬間はいつも突然やってくるものだ。
釣行3日目。 ゲストがいつも通りに岸際のある1点、水中に変化のあるポイントにスプーンを沈めたその直後に出会いは突如として起きる。
「きましたっ!」 「いいねっ!」
「ボートだからイトウを寄せてきてからが本番だよ。あいつら体力残すとボートの下に入ってこようとするんだ、まずはゆっくり時間をかけて魚を浮かせていこう。 心配しないでね、良い位置どりになる様に常にボート動かすから、魚の動きに集中して。」
「了解です!」
格闘数分の間、緊張と安堵の繰り返しとなる。 1秒ごとがまるで1分にも感じる様な長い時間になったかの様な錯覚を覚える。 よせては走られ、また寄せては潜られ、ゲストはタモ入れの直前にボートの真下に逃げられないようにだけ集中し、ロッドを使って魚の頭の向きをコントロールする‥
「よし、浮いた。 次のこっちに寄せてくるとこでタモいっちゃうからね。 入ったらすぐにテンション抜いてね。」
「了解です。行きます。」
「ざぶっ」(タモの入る音)
「いえ〜〜! やった」
「よっしゃー まず1尾!」
ガイドはゲストにできるだけ「今やるべきこと」 をシンプルに伝えるようにしている。 初めての釣りに挑戦するゲストとしては自分のイメージとのすり合わせがうまくいかずに不安になるのは誰しもが同じだと思うから、明確な行動目標とシンプルな指示はこの場合いちばん合理的なのだ。 ひとたび経験を積みさえすれば、歴戦のアングラーである彼らはすぐに自分で考え、的確な行動を取れるようになる。 ガイドがやるのは最初の不安を埋めてあげる「ひとささえ」だけでいいのである。
この竿を使って今回の釣りでぜひイトウをかけてみたかったんです。
といって嬉しそうに竿の話をしてくれた。
日本人アングラーの場合に特に多いのが自分の「道具に対する拘り」
ただ釣れれば良いという人もいるが、やはり自分のイメージ通りに自分で用意した道具で釣ることに魅力を感じるという人が特に日本人では圧倒的に多い。
そういう釣りの哲学においてタックルというのは釣りに対する個人の思い入れを率直に具現化したものなのだから、愉しみを追求する上で「釣ることよりも道具を使うこと」こそが楽しみの核心になっていて然りなのだ。 まぁ、そんな日本人の道具へのこだわり気質があったからこそ、今や世界でも稀有な釣具メーカー大国になったんだけどね‥
そういう「道具こだわり」の希望があればガイドはもちろんそれに対応してゆく。 ただ‥ 乗船人数の関係などからタックルの使用に制限が出てくることもまた避けることができない事実として忘れてはならない。
8フィート近いパワーのあるロッドを存分に振ってキャスティングで釣りたい‥ という彼の場合は1名参加でなくてはならなかったのだ。
まず、何の制限もなく自分の思い通りの釣りがしたいのであれば、乗船人数は絶対に少ない方が良いに決まっているし、いちばん間違いないのは1人でくることだ。 釣果において考えたって、魚やポイントを独り占めにするか、それとも友達とシェアするかでどっちが自分によく釣れるかなんて考えるまでもないだろう。
釣りのこだわりが多ければ多いほどにそれを実現するためにはガイドレート(ガイド1名が対応する人数)によるクオリティとの相関関係があることを理解しておいてほしい。これは全世界のあらゆるタイプのガイドに共通の常識でもある。
いろいろと書いたが要するに、出来るだけ少人数で出来るだけ多く日程を取ること。 ‥これが勝率をあげる唯一の「確実な」方法である。
乗船人数とキャスティング制限の関係。 これをイトウのフライフィッシングの場合の例えでわかりやすく言えば‥ 「3人乗船でツーハンドのフライキャスティングで全員同時に釣りがしたい‥ 」 これはちょっと無理のある相談となる。 もし3人乗船で同時にフライキャスティングで釣りをするのがどうしても譲れない条件ならば、ツーハンドではなくシングル‥ それもスカジット限定となる。比較的安易にキャスティングができるのはバウ(船首)の一人だけとなり、あとの二人は中列で左右それぞれに左右のボートサイドのわずかな水面スペースを利用してなんとかスカジットキャストしてもらうしかない。当然技術は船首の人よりもさらに上でなくてはならないのだ。 そもそもボートという狭いスペースの中にあってロッドを振り回す以上、周りに人が誰もいないような状況でのびのびと自由にキャスティングするような方法は1名乗船でやるのが理想的だ。2〜3人でこのシングルスカジットをやること自体不可能ではないが、その場合は全員が「 それなりの腕前 」である必要がある。 これがさらにオーバーヘッドでのフライキャストとなると1名以外では完全に不可能なのは言うまでもないだろうか。
「それならば、上陸させてよ。 そしたら各々ウェーディングして釣るから。」
これも現地の状況を知らない人に(これは仕方のないことです)よく言われるのだが‥ そもそもボートから上陸できそうな場所がほとんどないのである。我々の赴く湿原河川は「完全に天然」 両岸は深く切りたち、何よりも深いブッシュに全てがびっしりと覆われているのだ。 仮に何とかブッシュをかき分けて上陸したとしても、ツーハンドロッドを振り回すようなスペースは取れないだろう。 ‥むしろそんな場所だからこそ、オカッパリの釣り人のプレッシャーを逃れて、完全天然のイトウが数多く生息しているような場所なのである。 こういう場所にはもはやプロのガイド付き(釣りはせずに操船だけを専門で担ってくれる人)のボートからキャスティングで釣る以外、まともに釣りが成立する方法などないのである。
「でも、どーーーーうしてもツーハンドでキャスティングしたい。3人じゃなきゃやだ。 北海道の釣り雑誌で見たもん。 ボートで楽チン移動しながらあれがやりたいーー!」
‥そこまでいう人がいるかどうかはわからないが(‥いるかも) それならば時期も場所も完全に変えた上でそういう条件で臨むことは不可能じゃないし、良い提案もできる。 要は川の形態の問題なので秋の湿原河川のこのパターンでは無理であるというだけだ。 ‥でもまずは上記のような方法で実際に湿原河川でイトウを釣ってみて、その過程においてガイドと直接相談してほしい。ツーハンドのキャスティングができる人ならシングルハンドはまったく難しくないだろう。
いずれにせよフライフィッシングの場合はルアーに比べてそもそもが成立条件の難しい釣りであることは間違いない。
‥だからこそ、フライはルアーよりも圧倒的にカッコ良いのだが。
みなさま、ドリフトボートからシングルのスカジットキャストをビシバシ決めれるようになったら 、それはもうかなりイケてる感じですぞ。
最新のシングル・ハンド・スカジット。 ここで自分が特筆すべきは世界のスカジット・キャスティング技術の開拓者の1人であるレジェンド。 エド・ワード氏をして自らが
「この新しい技術はドリフト・ボートからのキャスティングにとても適している。」
‥と言及していることだと思う。 ‥いや、そのドリフトボートガイドの自分もまったくもってそう思う。 実際に氏のブランドであるOpst(オーピーエスティー)の商品紹介動画では彼自身の手による、川に浮かぶフローターやボートからの見事なキャスティングを見て学ぶことができる。 2020年の秋、あるフライのゲストが私(ガイド)がこのシングルハンド・スカジットをやっているのをすぐ横で見ていて、「 それが今の最新のフライフィッシングなんですね‥ いや、すごい‥ 一発なんですね! 私もすぐにそれを試してみたいです。 ‥帰ったらすぐ道具1式ぜんぶ買います。 」 ‥といって少年のように目をキラキラとさせていた。
人って自分の中に新しい可能性を見出したときがいちばんワクワクするもの。
初めて魚を釣った時の嬉しいあの感じを、また思い出してみましょ。今度はこのシングル・ハンド・スカジットで‥。
*このキャスティング、実はそんなに難しくない。(難しくないとはいってもそれはトラディショナルなスペイなんかと比べてのこと。 それなりの時間を練習に費やさなくては実際に現場で魚を釣れるレベルにはならないので注意。 *筋の良い若い人で1〜2日 普通のおじさんだとその倍の3〜4日はびっしりとやっていて何とか形になるくらい、と思う。) 専用の道具建てが必要だが、プライベートガイド時にわかりやすく教えてあげられるだろう。 短い日程で、3人乗船でルアーも同時にやって、イトウも本気で狙って‥ とか、いっぺんに欲ばられるとちょっと大変なのでそれはできれば勘弁してもらいたいのだが‥ ゆっくり時間をとって余裕を持ってやるのが良いだろう。
ルアーの場合も同様に立って自由にキャスティングができるのはバウ(船首)の一人だけ。 3人乗船の場合は安定性の関係からそれも不可能になる。 座った状態からのルアーのキャスティングはある程度技術のある人じゃないとやりにくさを感じるのは間違いないだろう。 こういう場合はとにかく「長くて硬いロッド」ほど扱いにくくなってくる。 ロッドそのものをオーバーヘッドで大きく振りかぶることは、他の乗船者にルアーや竿が当たってしまうことから絶対にできないので、必然的にロッドの反発力を利用したコンパクトな動作のフリップ系のキャスティングが中心になるからだ。 主にイトウのボートゲームの現場で使うルアーは7〜14gのスプーンが中心。これくらいのルアーを座った位置からフリップキャストしやすいロッドはというと、6フィート前後(長くても7フィートが限界) のやや前よりに調子の乗ったウルトラライトアクション〜ミディアムライトアクションが使いやすい。 ちなみにガイド自身が「3人乗船の着座」から使うならもう迷わずに5.6フィートのウルトラライト 6:4か7:3調子を使うだろう。 「そんなの渓流と同じタックルじゃないか! イトウなんてかかったってキャッチできるわけない!」 ‥と思う人いっぱいいるんだろうか? さてさて実際はどうかというと‥
「どぎゃぎゃぎゃーーーーーーん」 とリールのドラグは甲高い音をたてて逆転。 ヒット後両岸のボサ下になんとか逃げ込もうとダッシュすること5回や6回‥ その全ての突進を見事に受け止めて暴れる猛者をしなやかなロッドの胴に乗せてうま〜くいなしてくれたのは彼。 彼のタックルを紹介すると‥
ロッド:パームス シルファー SYSSi-411 XUL
リール:シマノ ステラ (たぶん1000とかC2000)
ライン:PE 1.5 + ちょびっとだけショックリーダー
ルアーはダイワ チヌーク たぶん7gか10g
ルアーフィッシングを初めてまだ間もないという彼は、先輩のベテランアングラーに連れて来てもらい、今回初のイトウキャッチと見事にあいなった次第。
ちゃんとイトウ釣れてよかったね!
XULと聞いて、信じられない人もいるかもしれないが、本来釣竿というのは「柔能く剛を制す」の概念に基づいて、しなやかに曲がることによって、想定以上の大きな魚が掛かっても柔軟に強引を受け止めることができるように作られているもの。 竹林は台風下の強風でも決して折れない、というやつである。 強風で折れるのはむしろ大木の方だ。
とりわけパームスの「シルファー」は虚飾を排し、実使用向けに価格も抑えて作られた超実戦派向けのトラウトモデル。シリーズラインナップ中最も細く柔らかいXULであっても、実際にイトウの強引な突っ込みを何度も受け流すことができるだけのしなやかさと強靭さを併せ持つあたりはまさに日本刀のそれといったところ‥ ガイドもULを北海道のあらゆるターゲットに使用しているが軽いのにも関わらずジワリとした粘りのある感触が素敵である。
このシルファー、メーカーではヤマメやイワナといった小型の対象魚を想定しているロッドだが、本来どのメーカーのどの竿に関わらず、そこそこの釣竿というもの自体、底力が皆「それくらいは」あるということだ。 一昨年のテンリュウのレイズ・ライトアクションを使ってイトウを釣っていた例もそうである。
それにしてもまぁ‥ こんないろいろと意欲的に釣竿を開発してきたものだと日本人の「職人のモノづくり」に対する意識の高さにはまだまだ敬服するところが多い。開発はさぞかし大変だろうと思うが、時代を超えて現代のイトウのボートゲームの第一線で、ルアーフィッシング初心者のゲストにもこうして素晴らしいトロフィーを与えてくれているのだ。
5フィートにも満たないロッド全長とULよりもさらに柔らかいXULでしなやかさを武器にイトウを仕留める。 ‥これは本当にゲームフィッシングとしては「カッコいい」‥とこの時の釣りは後にKAMUYの海外のオブザーバー達からも数多くの賞賛の声をいただくこととなった。
大都市から原野へと飛行機でスピーディに移動して、イトウはライトタックルでカジュアルにかつ豪快に。 ‥ていうのは実に現代的でもあるだろう。
‥もちろん精密なドラグ機構を有するリールや、最新の素材による滑らかで強いラインがあってのものだとも思うが、 まぁ実際に心配だったらメインラインだけはロッドの指定よりもかなり強めのものを使えば問題ないのである。 この時の彼も1.5号のPEを使っているがおそらくメーター級が来ても今のリールやラインは品質が良いのでキャッチできるだろうと思う。
‥なに?? そんな指定以上のラインを乗せてロッドが折れないのかだって??? そら、ドラグ調整ちゃんとしないでラインに合わせてゲキ締めしてたり、鋭角にUの字まで平気で曲げて使ったらそらどんな優秀な竿でも折れますがな。 ‥ドラグは竿に合わせるもの。 それもロッドを直角まで曲げて使うか、それ以下の角度で抑えて使うかによって増減させます。
実釣経験と確かな技術・応用力があればどんな道具でもちゃんと機能してくれる。
「弘法は筆を選ばず」 ‥というのはそういうことじゃなかろうか?。
ベイトタックルの場合も3人乗船ならばやはり座った状態からのキャスティングしか出来ないのは同じ。 ベイトでのコンパクトな動作でのキャスティングはスピニングよりも難易度がグンと高いので注意が必要だ。 ベイトタックルでは「伝家の宝刀」本家のフリッピングによる連続至近距離キャストが可能なので、ボートに立ってこれを行えるのであれば戦力としてはスピニングよりも申し分ない。
ただ‥ 少し気をつけなくてはいけないと思っているが‥ 最近こういう書き方をすると、使ったことないのにベイトタックルを持ってきてしまって全く釣りにならない人がひじょうに多いという困った問題が起きる‥
フライにせよ、ベイトタックルにせよ、重要なのは釣り人がそれを「使いこなせるかどうか」なのだ。 カッコ良いスタイルに憧れる気持ちはわかるが、慣れていない人はスピニングを使う方が断然良いし、実際釣れるのでそっちの方が絶対良い。
「いや、せっかくきた北海道だしここはやはり北海道らしくフライで‥ 」とか「 ここはひとつベイトタックルの入門を兼ねて‥」 とかみなさんの「やりたい気持ち」はわかるのだが‥ ここはひとつせっかく北海道に来たのだからまず1尾釣りましょうよ。 ‥というのがガイドの意見。と小声で言っておこう。
長くガイドをしているが、「現場で新しい技法のキャスティング練習を開始した人」が目的の対象魚をちゃんと釣ったところはほとんど見たことがないので‥ フライフィッシングやベイトキャスティングを試してみたい人はまずは地元で十分に練習してからの方が良いと思う。
普段から余裕でやっていることしか本番ではできないのである。 それが短い時間内でとなるとなおさらのことです。
4日間の釣行で初日〜2日目とノーバイト・ノーチェイス‥ 不運なタイミングのゲストの場合は4日目の最終日で念願のイトウと対面することになるのだが‥
1日目ボウズの夜 あるゲストの談 「 まぁ、最初はこんなもんですよね! 明日からエンジンかけていきますよ!」
2日目ボウズの夜 あるゲストの談 「‥(無言)‥ 」
3日目ボウズの夜 あるゲストの談 「‥てか釣らせてくださいよ! マジで! 本当に大丈夫なんですか?? 」
‥という風に誰しもがなる。
彼の場合は3日目の釣り開始直後に嬉しい出会いとなった。
「イヤー 早く釣って楽になりたいって思ってたんですよ‥ 」
‥というのは正直な気持ちだと思う。
ガイドはまず水色を見てそこにいるイトウが釣れる状態にあるかどうかを判断している。 次に見るのは「魚自体に動きがあるかどうか」 なのだが、ベイトフィッシュの動向が最も注意すべきものであることは魚食性の魚の釣りならもはや常識だ。
「ベイトが何やらチョロチョロしとるよね‥ イトウいるかしら‥? 」
スプーンにかかったのはなんとベイトフィッシュそのものだったという楽しいオチ。
これはワカサギ。 代表的なイトウのエサとなっている。
彼はこの魚のほかにも数尾の形の良いイトウをキャッチしてくれたが、彼に同行してくれた友人たちにはどういうわけか、なかなか釣られてくれない様子‥ 仲間と一緒の釣行は楽しみもある反面、釣果に差が出てくるとそれはそれで複雑な感情が入り乱れることもあったりして‥
でも彼も含めてこの時の若い釣り人たちはみな、3人乗船にも関わらず実に良いキャスティングをビシビシと決めてくれていた。
「これ、やっぱり短い竿の方が断然いいですね!」
「だと思うよ。 バスロッドがいいんだよ。もともとこうやってボートからキャスティングするために作られた竿だからね。」
「そう思います。」
「イトウ専用の竿ってみんな長いじゃないですか? なんでなんですか??」
「んー それはその竿作って売ってる人がイトウの「オカッパリ」専用って詳細に表記しなかったからなんじゃないかと‥」
「なるほど! そういうことですか!」
世のロッドビルダーの方々、彼らのような良いコンシューマー達のためにも今後はぜひイトウのボートゲーム専用の竿も区別してラインナップしてあげてほしいと思う。
ところで‥最近の釣り人の傾向にこのスプーンというルアーに馴染みの薄い人が多くなってきていることがあげられるだろう‥
決して少なくない人達が、
「スプーンよりもミノーの方が釣れる気がする‥」
というのだが‥‥現在の市場でミノーが人気があることには実は釣り具業界の「ウラ」の事情も関わってたりする‥ まぁそれは今回はおいとくとして、ミノーについてはまた別の機会にその独特の強みも含めて書いていこうと思う。スプーンの話に戻すことにしよう。
実際、数多くのベテランルアーマン達とこの件について話すと、ある面白い共通点が浮かび上がってくる。それは、ルアーを長くやってきた経験豊富な大ベテランほどこのスプーンを得意にしている場合がほとんどだということ。そして、数多くの輝かしい釣果の実績から見ても使われたルアーはだいたいスプーンであることが多いということである。
スプーンは世界最古のルアーであり、同時に究極のルアーでもある。 スプーンが究極というのにはまずその汎用性の高さにおいて理解しやすいだろうと思うが、基本的にスプーンは 投げてよし、沈めてよし、上も下も(表層近くも底近くもという意味)どっちも一つのルアーを交換することなく素早く狙える。 というのがまず理由である。 自分は(ガイド)は例えば海外への情報の一切ない開拓釣行などではまずこのスプーンを必ず最優先で携行している。荷物の量も制限されていて、持てるルアーの数に限りがある場合がほとんどだからなのだが、とりあえずスプーンがあればまず大抵の状況には対応できるだろうというのがその最大の理由であって、汎用性というのはこういう海外開拓釣行の例のように「先の状況があまり明確に見通せない」ような場合にとても助けられるものなのだ。 ちなみにこの「先の状況が読めない」状態というのはイトウの釣りに初挑戦するゲストについてもまったく同じことであるので、彼らにはまずスプーンを勧めている理由なのだが、 最近はこのスプーン自体を使ったことがほとんどないという人が少なからずいる、という残念なことになっているのだった。
スプーン=数あるルアーの中でも飛び抜けて高い汎用性を持つルアー である。
そこに加えてスプーンの持つ最大の魅力でもあるのがフォールさせることによって発揮される「食わせる」力の強さである。
ミノーにせよソフトルアーにせよ最終的に食わせあぐねて最後に行き着く先が「何もさせずにただ沈めてたら釣れた」 という経験はあるだろうか?
なぜ沈むものに魚は最もよく反応するのかと疑問に思うかもしれないが、スレたやつも含めて魚は、重力による自然な落下の動き方にはいちばん警戒を解きやすく且つ、興味を引きやすいから‥という仮説が今のところいちばん有力であろう。
リトリーブにせよトゥイッチやジャークをするにせよ、そこには人為的な操作による「どこか不自然」な動きや水中を伝播する振動を、側線の発達した魚は本能的に感じているはずで、こういった人為的なアクションを同じ魚に対して続けることが最も魚を警戒させ、且つ飽きさせやすい、(=魚がスレる) という事実は経験上多くのルアーマンが知っていることと思う。 とても良い例としては近海ジギングなどでのフォーリングを中心に魚を誘うスロー系ジギングが昨今のスレきった魚に最も効果があるメソッドだが、これは既に世に知られた不変の事実でもある。
もちろん沈むことにさえスレてしまったような例えば本州のメジャーなポイントのバスのような魚には他の、止める(放置する)・浮かせる・瞬間的に動かす・何かにぶつける、などという方法が功を奏すパターンも数多く存在するが、少なくとも私たちがイトウを釣っているような北海道の原野でそこまでスレてしまっている魚はそう多くはいない。 ことイトウに関していえば、ルアーの使い方云々よりも広い原野の中でイトウに巡り合えるかどうかの問題のが大きい。
スプーンというルアーはゆらゆらと沈んでいるときに最も良い動きをして魚の興味を引きやすいように計算されて作られている(少なくとも海外の昔からある名品や日本でも昭和の頃から変わらず売られているようなものは大抵そうだ)、リールをぐるぐると巻いてブルブルと震わせるよりも、ビシビシっとカッコつけて竿先で瞬発的なアクションを加えるよりも何よりも「何もさせずにユラユラ沈んでいるとき」が最強な「食わせ」の状態なのである。
「元祖スロー系ジギング特化型ルアー・キャスティング仕様」
‥むしろこう呼んだ方が最近の釣り人にはスプーンの使い方をイメージできて理解しやすいんだろうか?
それこそがオーソドックスな形状のスプーンが持つ潜在的な能力を最も発揮する使用法なのであって、ようは近海でやるか川や湖でやるかの違いだけ。 浅い水深でも少ない質量と広い表面積で効果的に水流を受け、水面からボトムまで短い移動距離の中でもひらひらと効果的に魚を誘う‥ それを最もシンプルに形にしたらこうなった‥ というか最初からそうだったというわけだ。
フォール主体のスプーニングでのフック設定の例
スプーンが最も良い誘いをするのはフォールである、ということがわかっている時点でフックに求められるものも自動的に決まってくる。 結論から言うと懐の広い針が適しているだろう。
針先が内側を向いたネムリの形状が良いか、それともストレートポイントが良いかとか‥ ヒネリはあった方が良いのかそれともない方が良いのか、フックのカラーは?とかいった選択肢は上記のワイドかそうでないかといった問題よりも優先度ははるかに下がる。まずは広い懐を持ったフックを使うことが大事なのであって、これだけでヒット率が全然変わってくるのである。
また、湿原河川のイトウの釣りの場合は何よりもゴミを拾って時間をロスしてしまう煩わしさを考慮しないわけにはいかないから、トレブルフックや複数のフックを装着することは手返しのスムーズさを求めるためにはできるだけやらない方が良い。 つまりイトウは‥ ワイドゲイプのシングルフック1本。 ‥となるわけだ。 こう言うと色々難しく考えてしまうような人もいるかもしれないが、一般的な「チヌ針」で別段問題ないのである。
スプーンもその形状から重量配分による動き方の違いに差がある。カップが深く、後方に重心のよったこのタイプのスプーンはどちらかというとテンションのかかったテンションフォールに向いていると言えるだろう。 川で流速のある場所で使う場合、アングラーが操作支点となる足場の位置を動かないのであれば、常に水中のスプーンには一定のラインテンションがかかるから当然こういったタイプのスプーンは本来の良い動きをしてくれるわけで‥ ボートの釣りでは足場が動くので長い距離を移動しながら一定の棚を切って流すことに、この特性を応用できる。 当然それはタナを大きく外すと食いが落ちてしまうようなシブ〜〜い状況での切り札となるわけだ。
このタイプではテンションフォールの際に常にスプーンの凹んだ側が上を向いて流れる。 そのためフックポイントが常に上を向くようにリングとフックが一体成型のスプーン専用のフックを使っている。 底スレスレを流すような時には根掛かりやゴミも拾いにくいので使い勝手も良い。 ちなみにこのタイプは飛行姿勢が安定しやすいので飛距離が云々‥ という人もいるがそれは誤りで、カーブが深い分、飛行中に片側に揚力が発生して軌道がカーブしてしまいやすくそこまで飛距離には貢献しない。
10月中盤のもうどうにもならないくらいの渇水。
あらゆるルアーを試してふられ続けた、所謂シブ〜〜い状況‥
スプーンを底を切ってゆっくり通すと、ちっこいイトウがなんとかくわえてくれた。 最終的にスプーンに救われた記憶は今までも数知れない。
10月の早い時期に天候はまだ安定していることが多いことから、悪天候のリスクを避けるために早めの時期を選ぶ人も多いのだが‥ 早い時期は湿原河川の水温がまだだいぶ高く、釣果はイマイチなことが多い。地元の釣り人たちも口を揃えて「デカイやつは凍れが入ってきてから(本格的に寒くなってきてから)だ。」 という。 遠征の時期選びではいちばんの迷いどころだと思うが、 ガイドとしては強気の11月をオススメしたいところ。 虎穴に入らずんば虎児を得ずである。 10月にトライしてちっこいイトウを釣ったのなら是非次は11月にまた挑戦してもらいたい。
スプーンの話が出たついでに‥ ルアーというものを原点から考えてみる‥
ルアーとは英語でLure(誘惑する, 誘致, 囮) であり、餌ではない。 つまり魚の食性を利用しているものではない、と本来の訳からも理解できる。 魚がルアーをくわえる理由はそのほとんどが興味によるもので、本物の餌とは似ても似つかないこのスプーンというルアーは「魚の興味をひく」ことにシンプルに完全特化したタイプのルアーである。
なぜ興味があるものを魚はいちいちくわえるのか?という疑問もわくが‥ それは、そもそも彼らに「手」というものがないからであって、興味のあるものを「触ってみよう」と思ったら口でくわえてみる以外方法がないからなんじゃないか‥ ? という仮説はちょっと面白かったりもする。
‥「なるほど、言われてみりゃ確かにそうだよね‥ 手ないよね‥ 魚。 」
なんか面白そうだし、ちょっと触ってみよう‥ となれば軽く口先でくわえてみる‥ というのがいわゆる「バイト」なのだと考えればなるほど、と納得がいきそうである。
広い世界にはある実験を試したすごい暇な人(いや、尊敬すべき人!)がいて、ルアーを食いそうな魚の近くに本物の弱った小魚やミミズを入れてみたところぜんぜん反応しなかったが、その後すぐにルアーを入れたらその魚は猛然とルアーに襲い掛かったという。
真偽のほどはわからんが、ガイドも実はこれと似たような経験をしたことがあり、ある湖で弱ったワカサギが湖一面に浮いていてもトラウトは全くそれを捕食しようとはしなかった。
それならば‥ とスプーンをぽちゃんっと投げ入れたところすぐになかなかのサイズのアメマスに食われたということが一度ならず何度もあったのだ。
つまりのとこ魚はこのルアーが小魚ライクだからミノーを食うとかミミズライクだからワームを食うとか、本物の餌と認識して騙されて食しているわけではないらしく、「ただなんとなくユラユラと揺れるもの」に本能的に興味にかられてちょっかいを出してるのがほとんどなんじゃないか‥ と考えても良いのかもしれない。
ルアーはルアーであって餌ではない。
そうなれば、魚を釣りたいだけのこれまたシンプルな生き物である釣り人は、それでまた少しルアーフィッシングの核心に迫れる新たな境地が拓けてくるような感じもしてくるし、餌釣りなどの他の釣りも含めて、楽しみ方もより一層ポジティブな方向に広がっていくんじゃないだろうか。
‥何れにせよ、魚がホントはどう考えて釣り人の針にかかっているのか、真実は魚になってみなければ永遠にわからないことではあるのだけれども。
‥でも、もしかしたら今後、中国なんかで最先端のAIとかゲノムとか量子コンピューターとかで解明されたりして‥ ?? もうどうなるかわからん21世紀である‥。
11月初旬のある夜、「なんだか今夜はいつもより寒いな‥」 と思い、朝起きてみたら辺り一面銀世界だった。
朝、旅館のおじさんがせっせと僕たちのために物置から出してきたばかりのスノーダンプ(通称:ママさんダンプ‥ 雪かき作業に使うでっかいプラスチックの道具)で車が出しやすいように雪かきをしてくれた。
「11月のこんな早い時期にこれだけ積もるのは珍しいね。 天気はほんと年々おかしくなってるよ。」
栃木からのリピーターのゲストは雪こそ珍しいわけではなくとも、一晩で膝まで積もってるのには驚いたらしく、旅館の前に雪だるまを作っていた。
「こんな雪でも行くんですか? そもそもイトウ釣れるんですか?」 ‥率直な質問だが、ちょっとだけイジワルして
「どうかなぁ」 ‥と答えてみる。
「行かないわけないじゃん! こんなスーパーベストコンディションな時に‥」 と心の中でつぶやき「いひひ」と笑うのであった。
この日の午前中、雪景色の中これ以上ないというくらいよく晴れる。
降ったばかりのフワフワの雪が太陽に照らされてキラキラ輝いていてホント綺麗、別世界に来てしまったみたいだった。
午前中あたりをつけたポイントはちょっと魚の反応控えめ‥ たまに小学生サイズのイトウがちょっかい出してくる程度。 昼を過ぎて少し風が出てきてもう寒くなってきたなーと思っていた。(北海道の11月は12時を過ぎたらもう夕方に向かってどんどん気温が下がる)
いつものようにアメマスが入れ食い状態になる。
「めちゃめちゃ簡単に釣れますね、面白い!」
3、4、5尾‥ とアベレージサイズのアメマスが釣れ続く。
「コンっ」 とか「カツンっ」 と金属的な前アタリがあった後にビビビッと来たり、ちょっといいサイズだとグングンっと竿の真ん中くらいまで絞り込んで来たりする剛の者もいたりする。
ゲストの彼は夏に谷の大イワナで50cm級を何度も経験しているので、アメマス釣りのこの辺りはもう手慣れたものなのだろう。 見ていても余裕がある。
竿先がゆっくり『じわーーーっ」 と‥ 重くなった。 (このアタリは本命‥) すでにわかっている‥。 6.9フィートの MLのルアー竿が更に真ん中くらいまで「ズズズズ‥」 と曲がったあたりでロッドのバットエンドを脇に当て、体全体をひねるように使ってぐいっと「体重の乗ったアワセ」 を入れる。 パワーの乗ったアワセに少し手前にひきずられるように動いた感じが手元に 「 ぬるり 」 ‥と伝わるがかまわず、そのまま竿先をあげて溜めを入れ、次に来るであろう首振りに備える。 「グンっ‥ グンっ‥ 」 とゆっくりだがトルクのあるサケ科の魚らしい首を振るおなじみの引きがきて、この時点ではじめてガイドはイトウヒット宣言。
「ほれ、乗った。 イトウだよ」
「え! まじですか!」
「あい、イトウ。 ほれほれ早くかわって! 俺、ボートコントロールせにゃ」
ゲストが自分のキャスティングで出ていたラインを大急ぎで「ガーーっ」 と巻き上げたのを見計らって彼にイトウのかかった竿をバトンタッチする。
船首に座ってゲストとイトウの一騎打ちが始まると、魚の走った方向に向かってボートがゆっくりと「引きずられる」
「うわ。 嬉しいな。 やっぱいいな北海道! うわ。 最高!」
既にもう何度かイトウのファイトを体験しているゲストは、この時はゆっくりとイトウの引きを楽しんでいるっぽい感じだった。
「草の下、行きそうになったらマックスパワーで抵抗していいよ! だいじょぶ、ラインは絶対に切れたりしないから思いっきりやったって。」
「わかりました!」
イトウは右へ左へ、奥へ手前へと走るのでガイドはイトウの動きに合わせて釣り人とイトウがいつも同じアングルになるようにボートをグインっグインっと回転させる‥ ゲストにしてみれば自分とイトウを中心に世界がぐるぐると大回転しているように見えるだろうから、そらもうイトウに引かれながらのアラウンド・ザ・ワールド状態。 最高にハイになる時だ。
4〜5分もかかっただろうか、徐々にイトウが水面に鈍く輝く魚体を表すことが多くなってきた。
「浮いてきたね。 タモいこっか。」
「ハイ、どうしたらいいですか?」
「竿に乗せて魚の頭をこっちに向けたら、暴れてないのを見はからって「すっ」と手前に寄せるだけでいいよ。 パッと入れちゃうから」
「ハイ、お願いします!」
「だいじょぶ。 タモ入れ3段」
「あはは、確かに! 行きますよ!」
「おう!」
「ザンっ (タモの入る音)」
「はああ〜〜〜 やっぱすげぇなぁ北海道‥ いるんだよなぁ」
「だね! いい魚だね」
「ありがとうございました。」
「いえ、こちらこそ」
この後さらに数尾の同じようなサイズのイトウをキャッチするもこの時は残念ながらこれ以上の獲物は出なかった。決定的なポイントでの気配が1箇所だけあったが、どうやらそこに潜むヌシとは呼吸が合わなかった。
若い彼(ゲスト)とは夏にも一緒に山奥へ巨大イワナを求めて一緒に谷底を這い回ったりして、いろいろ楽しい思い出がある。 湿原河川のイトウも今回が2度目。 今回もまた忘れられない釣りとなりそうだ。
定宿となっている稚内市内の旅館からほど近い場所にいくつか良い酒場がある。 コロナ渦中ということもあって営業している店はまばらで人通りはほとんどない寂しい状態であったが、それでも日本最北の街ということもあってか、いくらかの観光客とビジネスマンがいて、数件の居酒屋が彼らの羽を休める場所を提供してくれている。 今回は特にこの「居酒屋たか」によくお世話になった。 気さくなご主人が海のものから山のものまでなんでも食べさせてくれるのだが、ご主人の特性のタレで漬け込んだ「ジンギスカン」‥これがまたなんともうまい。さながら高級店の熟成肉のように味わい深く、びっくりするほど柔らかいのだ。
ガイド自身は北海道の出身なのでジンギスカンは子供の頃から家庭でよく食べていたし、いろんな味付けを知ってはいるが、ここのジンギスカンは特におすすめしておきたい。
◽️稚内への空路:コロナ渦による影響と最新の事情
2020年秋はコロナウィルス流行による影響で羽田ー稚内の直行便がほとんど欠航になっていた。 当初からこの直行便利用による釣行を予定していた人たちは1ヶ月くらい前に突然発表される、ANAの運行スケジュールの急遽変更の発表に皆ドキドキしてたかもしれない。
結局、直行便は全て欠航となり、代替の路線で皆さん稚内を目指すことになったのだけれども、 結果的に羽田ー千歳ー稚内という一度新千歳空港で乗り換えてくる路線を利用する方が稚内空港の発着時間の関係から、行き帰り合わせて合計4時間近くも多く現地での釣りの時間を確保することができたため‥
「‥てかこれ、乗り換えの方がよくね?? 」
‥ということにガイド含めて皆あらためて気付かされることになったのだった。
‥この場合、釣り場での4時間て結構大きいよね??
特に稚内ー千歳の帰り便の発時間が直行便に比べて2時間半も遅いので、最終日の「いちばん釣りに慣れてきてる」 頃合いでの2時間半の違いはバカにできない。 この2時間半の間に良い魚を釣ったグループも実際にいたので、 今後ももし都合がつきそうなら稚内行きの空路はこの羽田ー千歳ー稚内、 帰りは稚内ー千歳ー羽田とするのが欠航もないし料金もほとんど変わらないのでいちばんオススメだと思う。
他、関西や東海地方または北海道内から稚内に向かう場合も、新千歳ー稚内のANA4841便 10:20新千歳空港発に間に合うようにまずは千歳を目指すと良い。
ANA4841は11:15に稚内に着くので、昼過ぎにはもうタックルを用意し終わって湿原河川のポイントに立って最初のキャストをしているだろう。 帰りはANA4843となるが16:00稚内発なので午後2時くらいまでは余裕で釣りができる。
◽️飛行機の乗り遅れに気をつけて‥
特に朝の便を利用する場合にちょっと気をつけた方が良いのは予定の飛行機に間に合わず、乗り遅れてしまうというあまり想像したくないパターン。しかしこれがホントよく起きるのだ‥
都内の移動は朝、首都高速が渋滞になりやすいので、羽田空港近辺のエアポートホテルに前泊するか、新千歳空港のエアポートホテルかもしくは札幌市内に前泊を利用するのがいちばん間違いない方法だと思う。 朝、首都高速をマイカー移動で来る予定のゲストが、よく渋滞に巻き込まれて貴重な釣りの一日を丸ごと無駄にしてしまう事例が今年だけでも2件あったので、あえてここで注意を促しておきたい。
‥そういう日に限って「良い日」だったりするものなのでw
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